原料や貯蔵の仕方、醸造期間、飲み方で分けることもあります。
ところで、焼酎と泡盛を皆さんは違うものと分けていますか。それとも同じ種類のものと考えているでしょうか。
どちらでも美味しく飲めればよい、と言われてしまいそうですが、せっかくですので、焼酎と泡盛の違いについて考えてみましょう。
- 目次
焼酎と泡盛の違いとは?
焼酎は大麦や米、そば、芋など、泡盛は米を原料として米麹を利用して作られます。
焼酎と泡盛ですが、実は利用される麹菌や製法に違いがあります。
1-1泡盛も焼酎の一種
沖縄で古くから親しまれる泡盛は、現在のタイとの交易の中で伝わったお酒です。そのため、原料として利用されるお米がジャポニカ米ではなく、タイ米が使われています。
1-2泡盛は焼酎のルーツといわれる
焼酎の醸造に使われる麹菌のルーツは、泡盛の麹菌になります。焼酎では白麹菌を使いますが、白麹菌そのものが泡盛から作られた麹菌になります。
そのため、焼酎のルーツは泡盛という話や、焼酎の種類の1つに分類されていることが多くあります。
1-3焼酎の乙類焼酎に分類される
焼酎は甲類と乙類に分けられます。
甲類は連続式蒸留機で蒸留した焼酎で、アルコール度数が比較的低いものになります。甲類の製造過程では、完全と言っていいほどエチルアルコール以外の揮発成分を取り除きます。
そのため、無味無臭で、どんなものにも合わせやすいお酒になります。チューハイによく使われるのは、甲類の焼酎ですね。
これに対して、乙類焼酎は伝統的な単式蒸留という手法を用いて作られています。
芋や米・大麦といった穀類が原料でアルコール度数が高い本格焼酎や泡盛は、乙類焼酎に分類されています。
乙類焼酎には原料や発酵に由来する香味成分が、蒸留後も多く含まれています。そのため、産地や原料の違いで、同じ焼酎でも味や香りの違いを楽しむことができます。
そして、同じ乙類焼酎でも焼酎と泡盛では、使用する原料や麹菌が違ってきます。
1-4主な違い
乙類の焼酎は麦焼酎、いも焼酎、米焼酎、そば焼酎などいろんな風味を楽しめる本格的焼酎があります。
泡盛は、沖縄で昔から造られた本格焼酎の一種になり、原料に米を使います。
しかし、仕込方法や麹の種類、米の種類など、他の本格焼酎とはわずかですが異ってきます。
また、熟成方法にも焼酎とはまた違う、独特な方法を採用しているため、別の酒という考え方もあります。
原料
乙類の焼酎も泡盛も、同じように麦・米・芋・そばを原料にして作られています。
しかし、麹菌は焼酎が白麹に対して、泡盛は黒麹になります。
また、同じ米を使っても乙類焼酎はジャポニカ米、泡盛は細長いタイ米になります。
古酒の有無
泡盛とは、米(タイ米)と黒麹菌を用いて、全麹仕込みと単式蒸留・常圧蒸留で造る、昔ながらの沖縄の本格焼酎のことを総称しています。
泡盛を3年以上貯蔵したものは古酒となり、古酒(クース)と呼ばれるようになります。
焼酎と泡盛の原料の違い
焼酎と泡盛は、同じ乙類でも、同じ醸造方法を用いていても、原料が違います。
2-1焼酎
焼酎は、鹿児島から北側で作られている焼酎がほとんどで、原料は日本古来のものばかりです。
米焼酎で使用されているのは日本の米
米焼酎で使用されている米は日本の米、いわゆるジャポニカ米またはうるち米と呼ばれる種類になります。
ジャポニカ米には、うるち米ともち米の 2種類がありますが、ジャポニカ米の特徴はふっくらとして甘みがあり、アミロペクチンと呼ばれるでんぷんを多く持つのが特徴です。
米にはアミロペクチンとアミロースというぶどう糖の結びつき方によって、性質が異なるでんぷんが含まれます。
もち米は複雑で吸水に時間がかかる複雑に枝状に絡み合ったアミロペクチン100%でんぷんになります。
一方、うるち米はアミロペクチン80%前後と、比較的分解しやすい鎖状につながったアミロース20%前後を含みます。
こういった米の性質を利用し、粘り気のあるふっくらした日本のお米を原料に作られたのが、米焼酎です。
本格焼酎では白麹を使用
乙類に含まれる本格焼酎は、ジャポニカ米に白麹を使用し、焼酎酵母、二次仕込みの段階を経て蒸留をします。
白麹菌そのものは、麹菌の研究で沖縄泡盛黒麹菌からアルビノの突然変異体として単離してできた菌種になります。こういったことからも、焼酎のルーツが泡盛と言われることがうなづけます。
白麹菌は焼酎文化に貢献した麹菌で、現在では世界的な焼酎ブームに利用されている菌です。
他の焼酎では黒麹、黄麹なども使われる
焼酎には甲類と乙類があり、甲類の焼酎では基本的に麹菌を使いません。
一方、同じ乙類の本格焼酎でも、原料がジャポニカ米以外のもの、例えば芋や大麦によって作られる焼酎では、白麹以外に黒麹、黄麹などを使用することもあります。
黒麹菌は芋焼酎で使われていることがあります。
黄麹菌は味噌や醤油づくりの他、日本酒や焼酎と多くの発酵食品に使われている麹菌になるため、味噌作りなどで馴染みがある人もいるのではないでしょうか。
2-2泡盛
泡盛も米を原料としますが、米の種類が違い、また麹菌も違ってきます。
タイ米(インディカ米)を使用するためコクが深くなる傾向
ほとんどの泡盛は、原料にジャポニカ米ではなくタイ米を使用しています。タイ米独特の甘い香りがありとコクが深くなるのが焼酎との違いです。
タイ米は別名インディカ米と呼ばれ、タイ米の中にもジャポニカ米同様にアミロペクチンを多く含むもち米もあります。
しかし、タイ米はジャポニカ米に比べ、アミロペクチンの含有量が少なくなります。そのため、一般的にジャポニカ米よりもモチモチ感が少ないのが特徴です。
元々、沖縄が琉球王国で、泡盛そのものがタイから伝わってきた焼酎のため、米の種類も異なっているのではないかとも考えられますね。
黒麹菌を使用するため辛口に仕上がる
泡盛は黒麹菌を伝統的に使用しています。そのため、仕上がりは辛口になります。
さらには、泡盛には二次仕込みがないなど、仕込み方法にも焼酎との違いがあります。
焼酎と泡盛の古酒の有無
焼酎は数週間の貯蔵の後、ほとんどの品種は瓶詰めされて出荷されます。
泡盛には、焼酎と同じように数週間で瓶詰されて出荷するものもあれば、長期に渡って熟成させるものもあります。
3-1泡盛には古酒がある
数週間の貯蔵の後、甕や木樽を使って3年以上熟成させたものを古酒と言います。
泡盛には、アルコールの他に、脂肪酸(有機酸)・脂肪酸エステル・硫黄系化合物という物質を含み、長く熟成することで、独特の香りやまろやかさを生みます。
3-2古酒とは?
ウイスキーと違い、焼酎には何年もの時間をかけて熟成させていないものがほとんどです。
その中で、3年以上熟成させたお酒を古酒と言います。
3-33年以上熟成させた古いお酒
古酒(クース)と呼ばれるものは、3年以上熟成させた古いお酒を言います。日本では、焼酎を甕やステンレスのタンク、木樽などを使って熟成させます。
アルコールの角がなくなり、味がまろやかに
長時間熟成を重ねることで、アルコールそのものに角がなくなり、味がまろやかになっていきます。
タイ米に含まれるフェルラ酸という成分が熟成によって、バニリン酸という物質に変化します。このバニリン酸が独特にバニラのまろやかな香りを生み出します。
他にもエステル酸が熟成によって、りんごの香りを出したり、中にはカカオの香りコーヒーのような香りも混ざり、泡盛を独特の香りとまろやかな味に仕上げていきます。
アルコール度数が高く、40度前後
泡盛は、焼酎のようにできて数週間の貯蔵で飲まれるものは、20度から30度と焼酎とほぼ同じアルコール度数になります。
しかし、古酒の泡盛は、他のお酒と比較してもアルコール度数が高く、40度前後になります。
普通の甲種の焼酎が36度未満、日本酒が15~30度、紹興酒が20度弱、になりますのでかなり高めということが解りますね。
他にも、40度以上のお酒には、ウオッカやウイスキー、ジン、ラムなどがありますが、ほとんどは水や氷、ソーダなどで割って飲むことが多くなります。
泡盛は、こういった強いお酒と同じアルコール度数になります。日本のお酒の中では、かなりアルコール度数が高いものになります。
そのため、初心者の人はウイスキーのように水や氷・お湯で割ったり、ジュースで割ってカクテルとして楽しむこともおすすめです。
焼酎と泡盛は違うの?わかりやすく教えます!のまとめ
焼酎のルーツと言われる泡盛のお話でした。
沖縄で古くから伝えられていた泡盛ですが、場所や地域が変わることで原料が変わったり、製造過程に変化が加えられて現在の焼酎に至っています。
こういった歴史を知ると、さらに泡盛と焼酎を飲み比べてみるなど、楽しみ方も増えるのではないでしょうか。