また、嚥下の力弱っている人も、若い人と同じように固いものや飲み込みにくいものは食べずらくなります。高齢者の3割は、普通の食事では飲み込むことができない、噛むことができないという問題を抱えているということです。
そんな人のために作られるのが、軟菜食になります。軟菜食には、若い人が食べるものと同じ食事を、歯茎でも噛むことができるようにしたものや、飲み込みやすくしたものです。
それでは、軟菜食とは何か、家庭で介護する時の作り方をご紹介しましょう。
- 目次
- 1. 軟菜食とは?
- 1-1. 普通食と同じ食材を大きさや柔らかさを調整して作った食事
- 1-2. 向いている人
- 2. 軟菜食の特徴
- 2-1. 舌でつぶせる、歯ぐきで噛める固さ
- 2-2. 揚げ物など脂っこいものを避けた、消化の良いもの
- 2-3. 普通食のメニューとほぼ変わりなく、見た目・香りも楽しめる
- 3. 軟菜食の作り方とポイント
- 3-1. 食材選び
- 3-2. 食材をやわらかくする
- 3-3. 食材によって調理方法を工夫する
- 3-4. 揚げ物など油が多いメニューを控える
- 4. 軟菜食を調理するときの注意点
- 4-1. 生野菜は避ける
- 4-2. 繊維の多い食材・やわらかくならない食材を避ける
- 4-3. さらさらした液体はとろみをつける
- 4-4. 酸味の強いものを避ける
- 5. 軟菜食レシピ
- 5-1. 献立名「鯖の缶詰ハンバーグ」
- 6. 詳しく紹介!軟菜食とは何かと、作り方についてのまとめ
軟菜食とは?
軟菜食はその名の通り、軟らかい菜、つまりおかずを利用した食事です。噛んだり飲み込めないと、乳児が食べるお粥や離乳食を想像し、食欲が半減してしまいます。
できれば、今まで食べてきたものを食べやすいようにして、提供してもらいたいと望みます。そんな時に利用されるのが、今までと同じものを歯茎でも食べることができる軟菜食になります。
1-1普通食と同じ食材を大きさや柔らかさを調整して作った食事
軟菜食は、できるだけ普通食と同じ食材を大きさや柔らかさを調整して作った食事のことです。
介護食の中には、ドロドロの粥状になっているものもありますが、食材まで変えられたら食べる気がなくなってしまいますね。
そこで、できるだけいつも食べていたものを食べやすく調整して作ります。
1-2向いている人
できるだけ健康な状態の時と同じものを食べたいと思っても、誰でも利用できるわけではありません。介護食によっては、全く自分の力で食べることができない人もいます。自分の力で飲み込むことができない人には、軟菜食では難しいことがあります。
軟菜食を利用することができる人は次のような人になります。
歯がない・悪い人
歯がない、歯が悪い人でも歯茎がしっかりとしている、舌でつぶすことができれば軟菜食を食べることができます。
軽い認知症でも、スプーンを持って自分で食べることがきる人は軟菜食を食べることができます。
咀嚼力(噛む力)が低下した人
普通に食事を摂ることはできるけれど、歯が弱って咀嚼力が低下した人は、無理に固い食べ物や粘りの強いモチ、蒟蒻などを食べるのは危険です。
しっかりと噛まずに食べてしまい、そのままのどに入ったときに飲み込めずに窒息してしまうことがあります。
また、固形物が残ったまま内臓まで送られて、食道や胃腸に負担がかかることもあります。そこで、小さく刻んだり、軟らかくしたおかずを軟菜食という形で食べることができます。
飲み込む力や唾液の量などの低下が軽めの人
歯は丈夫でも、飲み込む力が弱っている人もいます。
また、加齢によりドライマウス、唾液の分泌量の低下が見られると、食べ物をしっかりと口の中で溶かすことができません。さらに、しっかりと飲み込めず、むせてしまったり、むせた時に食べ物が食道ではなく気管に入ってしまい誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうことがあります。
しかし、軟菜食なら本人の好みに近い形で、飲み込みやすいものを食べることができます。
脂っこいものが胃にもたれる人
高齢になると、天ぷらやフライなど脂っこいものが胃にもたれるという人も増えていきます。それは消化機能が低下し、逆流性食道炎や逆流性胃腸炎などを起こしやすくなってしまうからです。
そこで、脂分を控えて軟らかく消化の良い形に変えた軟菜食なら、安心して食べることができます。
軟菜食の特徴
介護食には、「きざみ食」→「軟菜食(ソフト食)」→「ミキサー食」→「嚥下食」→「流動食」の段階があります。
きざみ食は、大きく口を開けたり、歯が弱っても普通のごはんなら食べることができる段階の人の食事です。
しかし、そこからさらに飲み込む力が弱くなっている人は、普通のご飯ではむせてしまうことがあります。
また、胃腸が弱って消化吸収能力が衰えてしまったり、上手に箸が使えなくなった人もきざみ食では充分に食事ができないことがあります。
この段階になった人は、柔らかく煮込んだり、茹でたりして舌でつぶせるくらいの固さにします。
これを、軟菜食といいます。
2-1舌でつぶせる、歯ぐきで噛める固さ
舌でつぶせるくらい、歯茎で噛めるくらいの固さということになるため、食品の原型が残っているものになります。
そこがミキサー食やペースト食とは違っています。
少し脂身のある刺身や、トロトロに煮込んだ野菜や豆腐などでも大丈夫です。煮魚の白身をできるだけほぐして汁をしっかりと染み込ませるなど、工夫次第で食べることができます。
歯が弱いというより、嚥下障害の人でも飲み込める柔らかさ、というのが目安になります。
2-2揚げ物など脂っこいものを避けた、消化の良いもの
胃腸など内臓に障害がある場合は、揚げ物やフライなど脂っこいものは避けましょう。内臓が健康でも、唾液の分泌量が減っている高齢者に、脂っこいものは消化に良いとは言えません。
しかし、揚げ物については、施設や病院によって見解が違うようです。ある施設では絶対に揚げ物は出さない、という意見ですが、他の施設では汁などにくぐらせる柔らかい天丼のような形なら出すということです。
これは、食事をする高齢者の体調によっても、異なるのかもしれませんね。
2-3普通食のメニューとほぼ変わりなく、見た目・香りも楽しめる
軟菜食は、ペースト状にしたミキサー食と違い、普通のメニューとほぼ変わりなく食べることができます。ドロドロ状のものではないので、見た目も変わらず香りを楽しむこともできます。高齢者の中には、楽しみは食べることだけ、という意見もあります。
食欲がわかないようなものより、見た目が食事であると感じることができる軟菜食の方が、良いようです。
軟菜食の作り方とポイント
軟菜食を作る時に一番大切なポイントは、普通の食事でありながら消化が良く、飲み込みやすくすることです。
そのためには、食材の段階での注意や調理の仕方も重要になります。
3-1食材選び
食材では、のどに引っ掛かるようなものや口の中に貼り付いたり、ボソボソするものは避けてあげましょう。特に、ボソボソするようなクッキーやビスケットは、若い人でも何か飲み物が欲しくなりますね。
いくら若くても、慌てて食べると危険なものに餅や団子もあります。まして、嚥下障害の高齢者では、口の中やのどに張り付いて危険です。
そこで、使えないような食材や調理の仕方を避けて提供してあげましょう。
繊維の多いものを避ける
ごぼうやれんこん、セロリ、たけのこは若い人にとってはシャキシャキ感を楽しめる食材になります。
しかし、ごぼうのように固い繊維質のものは、若い人でも食べる時に時間がかかったり繊維が歯に挟まるということもあります。歯が弱っている高齢者にとって、噛むのは至難の業です。
また、嚥下障害の人にも危険な食材になります。どうしても利用する場合は、れんこんをすりおろして、魚のつみれにするなどの工夫をしましょう。
キャベツや白菜は芯の部分を除き、葉の部分だけを時間をかけてトロトロになるまで煮て提供しましょう。
スポンジ状、口の中に張り付く、ボソボソするものを避ける
パン食はボソボソするので、避けている施設もあるようです。特に、パン食の中でも固いバケット、ボソボソするメロンパン、クッキーなども適切ではないといえます。
若い人が食べて固さや柔らかさだけでなく「口の中の水分が取られる」ような食材は、飲み込むことが難しいとイメージするとよいでしょう。唾液が少なくなっている高齢者の軟菜食には向きませんね。
また、モチや団子、くずもちのように口の中に張り付くものも適していません。もちもちして口の中に張り付く蒟蒻は、噛み切ることも難しく軟菜食には向いていません。どうしても同じような食感を味わいたい場合は、軟らかめの寒天が良いでしょう。
3-2食材をやわらかくする
どんな食材も歯茎でつぶせるくらいのやわらかさにします。
しかし、やわらかくするというとやはり「ミキサー」を連想してしまいます。そこで、調理でやわらかくすることが大切になります。
圧力鍋で加熱する
圧力鍋で加熱すると、魚の骨などでも食べることができますね。
高齢者の場合は、骨を食べるのは危険ですが、肉や魚の身、野菜をトロトロまで圧力鍋で煮込むことができると、美味しく食べることができます。
よく煮込む・蒸すなどしてやわらかくする
圧力鍋がない場合でも、時間をかけてよく煮込んだり、蒸すと食材がやわらかくなります。
芋類やかぼちゃは固いままでは繊維が残ることがあります。ジャガイモのマッシュポテトや、裏ごししたスイートポテトにすれば、芋類も楽に食べることができます。
かぼちゃやにんじん、葉野菜もしっかりと時間をかけて、煮込んだり蒸し上げると、歯茎でもつぶせるくらいの固さにすることができます。
たんぱく質が豊富な肉も、高齢者にとって大切な食材になります。
3-3食材によって調理方法を工夫する
しかし、食材によってはやわらかくしただけでは食べにくいものもあります。
逆に、口の中でべたついて張り付いてしまうこともあります。さらに一工夫してあげましょう。
やわらかくしただけでは食べにくい食材は、きざむ・つぶす
白身の魚は柔らかくすると身がほぐれやすくなりますが、肉はきざんでさらに食べやすくしましょう。
また、つみれなども豆腐を混ぜてつぶすと、食べやすくなりますね。葉野菜もそのままではなく、ちいさくきざんでさらに飲み込みやすくしてあげるといいでしょう。
肉が好きな高齢者なら、ひき肉を上手に使うと、きざむ手間が省けます。それでも、固めてしまうと食べにくいので、あんかけなどに利用すると良いですね。
繊維が多いもの、厚みがあるもの、ぐにゃぐにゃしたもの
芋類は繊維質のため、軟らかくしても蒸したままではボソボソしてしまうことがあります。そこで、蒸した後にあんかけなどにしてとろみをつけたり、味付けの汁で伸ばすなどの工夫をしてあげましょう。
スイートポテトを作る時は、牛乳とバターを少し多めにするとケーキとしては形が崩れやすくなりますが、高齢者には飲み込みやすいものになります。
厚みがあるものは、小さくきざんだりつぶして食べやすくします。
豆腐はやわらかいので使いやすい食材ですが、そのままでは大きくて口が開けられません。味噌汁やおかずに使う時は、小さめにカットしてあげましょう。納豆もそのままより、ひきわりが良いですね。
ぐにゃぐにゃしたものも食べにくいことがあります。
逆に、寒天などでゼリー寄せにすると食べやすくなります。
3-4揚げ物など油が多いメニューを控える
胃腸が弱くなっている高齢者は、揚げ物で胸やけがすることがあります。そこで、揚げ物など油が多いメニューは控えてあげましょう。
軟菜食を調理するときの注意点
それでは、軟菜食を家庭で調理をする時の注意点です。
まずは、衛生環境を整えます。
私たちの身体は65歳を超えると、徐々に抵抗力が弱くなり、中には乳幼児と同じくらいまで下がる人もいます。
風邪やインフルエンザだけでなく、ウイルスにも感染しやすくなりますので、包丁やまな板などは若い人以上に清潔にしてから調理をしましょう。
4-1生野菜は避ける
生野菜は、固くて食べにくいため軟菜食には向きません。
また、若い人には美味しいシャキシャキとした野菜いためも、段階によっては難しいかもしれません。
サラダを作る時は、生野菜のサラダではなく、芋やかぼちゃのサラダにしてあげましょう。
ゆでるなどしてやわらかくする
野菜は基本的に、ゆでる・蒸すが一番適しています。清潔にした包丁で適度にカットし、時間をかけてゆでたり蒸したりしましょう。
時間がない時は、ある程度レンジなどでやわらかくしてからゆでると時短になります。
4-2繊維の多い食材・やわらかくならない食材を避ける
繊維の多い食材・やわらかくならない食材といえば、ごぼうやたけのこです。色々な繊維質の食材はありますが、こういった食材は食べにくいだけでなく消化にもあまりよくありません。
繊維は身体に良いのですが、高齢者には難しいですね。きんぴらが好きなのに、と残念に思うかもしれません。その場合はやわらかくしたにんじんや一度ミキサーにかけて成型したれんこん、サトイモなどを使うと良いでしょう。なんちゃってきんぴらの出来上がりです。
4-3さらさらした液体はとろみをつける
嚥下障害のあるお年寄りは、さらさらした水分さえも誤嚥障害を起こしてしまいます。肺炎の元になるため、片栗やくずでとろみをつけてあげましょう。
飲み込みにくく誤嚥するリスク
味噌汁やスープは食べやすいので良いと思うかもしれません。
しかし、逆に勢いよく飲み込みすぎて誤嚥を起こしてしまいます。誤嚥性肺炎が原因で命を落とす高齢者が増えています。とろみなどをつけて、勢いよく飲み込まないよう注意してあげましょう。
4-4酸味の強いものを避ける
酸味が強いものはむせてしまうことがあります。若い人でも炭酸は苦手、という人がいますね。
かんきつるい、酢の物などはむせる可能性
さっぱりとしたかんきつるいや酢の物は、食欲が増すと利用したくなります。
しかし、あまりきついとむせてしまい、誤嚥の危険があります。酢の量を抑えたり、かんきつるいの果物はゼリーなどにするとおすすめです。
軟菜食レシピ
それでは、家庭で作れる軟菜食レシピをご紹介しましょう。
今人気の鯖の缶詰を使った簡単レシピです。
5-1献立名「鯖の缶詰ハンバーグ」
材料
・鯖缶 1個(150~200g)
・絹ごし豆腐 1/3~1/4丁(100g)
・卵 1個
・小麦粉 大さじ 2
・片栗粉 大さじ1
・塩コショウ 少々
・サラダ油
作り方
①鯖の缶詰と、豆腐の水気をよく切ります。
この時、鯖の汁にはDHAなど鯖の栄養が溶けだしているので取っておいて下さい。
②鯖・豆腐・卵・小麦粉・塩コショウをよく混ぜます。
③混ぜたものを4等分にします。
④フライパンにサラダ油をひき、両面がこんがりするまで焼きます。
⑤この間に、とっておいた汁に片栗粉を溶かして鍋でとろみのあるソースを作ります。
⑥出来上がったハンバーグに、とろみのあるソースをかけます。
基本は薄味です。ソースをかけるため、ハンバーグそのものは薄味にしましょう。
詳しく紹介!軟菜食とは何かと、作り方についてのまとめ
介護食になっても、きざみ食の時はまだまだ原型に近く、高齢者の人もあまり抵抗感を感じることなく食べることができます。
しかし、飲み込みが難しい、噛む力がなくなるとどうしてもペースト状になってしまいます。ペースト状になると、まるで離乳食のようで食欲がなくなってしまうこともありますでき。
そこで、少しでも食べる力がある時は、若い人でも美味しいと食べることができる軟菜食を作ってみましょう。