しかし、その力も弱ってしまうと、固形の軟菜食ではむせてしまったり、誤嚥を起こしてしまうことがあります。
とはいえ、若い人はもちろん高齢者にとって食事は一番の楽しみです。
そこで、形がなくなっても美味しく食べることができるミキサー食について、ご紹介しましょう。
- 目次
- 1. ミキサーとは?
- 1-1. かまなくてもいいようにミキサーにかけて、ペースト状にした食事
- 1-2. 向いている人
- 1-3. デメリットもある食事形態
- 2. ミキサー食の特徴
- 2-1. メリット
- 2-2. デメリット
- 2-3. 見た目が悪く食欲がわかない
- 2-4. 低栄養になりやすい
- 2-5. 粘度によっては誤嚥のリスクがある
- 3. ミキサー食の作り方とポイント
- 3-1. 普通食またはやわらかめの食材をミキサーやブレンダ―にかける
- 3-2. 粘度をつけて飲み込みやすくする
- 4. ミキサー食を調理するときの注意点
- 4-1. 不向きな食材・料理がある
- 4-2. 粒や繊維が口の中に残りやすいものは、誤嚥の原因に
- 4-3. 不向きな食材
- 4-4. ミキサーにかける前の食事を見せる
- 4-5. 水分量が多すぎると誤嚥の原因に
- 4-6. 低栄養を防止する
- 5. ミキサー食レシピ
- 6. ミキサー食とは?作り方について紹介!のまとめ
ミキサーとは?
噛む力がなくなると、飲み込むだけで食事を摂ることになります。
しかし、高齢者の中には、飲み込む力も低下していることがあります。それでも、食事を自分の口から摂るということは人としての理想です。
そのために作られているのが、ミキサー食です。
1-1かまなくてもいいようにミキサーにかけて、ペースト状にした食事
ミキサー食とは、噛まなくても良いようにミキサーにかけてペースト状にした食事です。若い人の中には、スムージー食事をしている人も増えていますが、まさにあの形状ですね。
1-2向いている人
ミキサー食は、高齢者が自分で食べることができる人の最後の段階の食事です。
歯がない、悪い、口が開かない、咀嚼力が低下しているなど、少しでも固形物があると、誤嚥の危険性がある場合に提供されます。
歯がない・悪い人、口が開きにくい人
歯がない、悪い人でも歯茎で噛む力があれば、軟菜食を摂ることができます。
しかし、口が開きにくくなると、歯茎ですりつぶすのも大変です。
その場合は、軟菜食でも飲み込めないことがあります。こういった時はミキサー食にしてあげましょう。
咀嚼力(噛む力)が低下した人
歯があっても、弱い、悪い、口が開かないと噛むことができません。顎の力が弱ったり、病気で顎が充分に動かなくなると咀嚼力が低下していきます。
しっかりと噛むということは、高齢者にとってとても大切なことなのですが、若いころから内臓や血液、脳は気を付けても、歯のケアをしていない人は大勢います。顎も同じです。
こういった高齢者の中には、虫歯はなくても歯槽膿漏や歯肉炎で歯が抜けたり顎が弱って、噛む力が低下してしまうこともあります。
飲み込む力も低下している人
高齢になると唾液の量が低下し、それに伴い飲み込む力も低下していきます。飲み込む力がないと、普通のお茶でさえむせたり、誤嚥してしまうことがあります。
その場合は、少しとろみのあるミキサー食の方が安全になる場合もあります。
胃腸などの消化器官が弱っている人
しっかり噛めない高齢者の中には、長年無理に固形物を飲み込んでしまい、食道や胃腸を傷めている人もいます。
また、加齢に伴い胃腸の噴門や幽門が緩くなり、一度胃に入ったものが食道に戻ってしまう、逆流性食道炎になっている人もいます。
このように消化器官が弱っている人は、できるだけ負担の少ない流動食に近いミキサー食が適しています。
1-3デメリットもある食事形態
しかし、ミキサー食になると食事といっても「食べ物」の形がなくなります。そのため、高齢者の中には抵抗感を感じることもあります。
軟菜食と違い、ホームなどで食事をしていると、他の人と違うことで引け目を感じてしまうなど、食事形態の面ではデメリットもあります。
また、家庭でも毎回すりつぶしたり、ミキサーにかけるなどの手間がかかります。
高齢の両親を介護するなどの複数介護になると、若い人の食事を含め3種の食事形態を作るなど、介護する側の負担にもなります。
ミキサー食の特徴
ミキサー食の特徴は、噛まなくても良いので、食べている間に軟菜食よりも誤嚥の可能性は低くなります。胃腸への負担も少ないため栄養の吸収も早く、体力が低下している痩せタイプの高齢者には適しています。
2-1メリット
ミキサー食にはどんなメリットがあるのでしょうか。
噛まなくても食べられる
噛まなくてもいいというのは、歯や顎が弱くなった高齢者にとっての負担が減ります。
楽に食べることができるので、今までいつまでも口に入れてもぐもぐしていたという疲労感を軽減することができます。
飲み込む力が弱っていても、飲み込みやすい
飲み込む力が弱っていても飲み込みやすいため、嚥下障害の高齢者に適しています。
嚥下障害が見られなくても、唾液の量が減っている高齢者にとって、飲み込みやすい食事になります。
胃腸に負担が少なく、栄養の吸収も早い
高齢者の中には、胃腸が弱くなり下痢をしてしまったり、逆流性食道炎で食欲が落ちることもあります。
そのため、どんどんと体重が減ってしまう人もいます。高齢者にとって体重は体力のバロメータにもなりますので、栄養の吸収を良くする必要があります。
ミキサー食は胃腸への負担が少ないため、栄養の吸収も早く体重をキープすることができるという期待も持つことができます。
2-2デメリット
やはり一番のデメリットは、見た目ともいえますね。ドロドロのミキサー食は、どうしても高齢者のプライドを傷つけることもあります。そのため、できるだけ美味しそうに、そして食欲がわくような工夫も大切です。
2-3見た目が悪く食欲がわかない
ドロドロの見た目は、どうしても食欲がわかないということもあります。
嚥下能力や歯の力が弱っても、重度の認知症などを患っていない場合は、高齢者の中にはプライドが傷つけられることもあります。
すりつぶしたりペースト状にしているのでドロドロ
ミキサー食は、すりつぶしたペースト状にしたものなので、どうしてもドロドロになります。まるで離乳食のように見えることもあり、食欲がわきにくいというデメリットがあります。
どれも同じような食事に見える
若い人の食事をそのままミキサー食にしてしまうと、全てが同じような色になってしまいます。
忙しいからと手を抜くと、見た目だけでなく臭いも気になり、食事とは思えないような形態になってしまうことがあるので注意が必要です。
2-4低栄養になりやすい
ミキサーですりつぶすためには、普通の食材に、さらに汁ものをたくさん足します。
水分があるので量が増え、取れる栄養が少なくなりがち
水分が多いため、普通の食材分よりも量が増え、その分栄養の量が下がります。そのため、水分で満腹になってしまい、摂れる栄養が少なくなることがあります。
見た目で食欲減退
見た目の悪いミキサー食は、食欲減退にもなります。若い人の中でも、スムージーを摂る人がいますが、皆さん使う野菜や果物を上手に利用してきれいな色に仕上げていますね。
高齢者も同じです。
肉と芋、野菜を一緒にミキサーにかけました、それではどれも茶色になってしまい、食欲減退につながり悪循環してしまうといえます。
2-5粘度によっては誤嚥のリスクがある
ミキサーにかける時に使う水分の量によよって、粘土が違ってきます。あまり薄くても濃くても、飲み込みずらくなります。
口の中でのまとまりにくいため、飲み込む力が低下している人は誤嚥しやすい
口の中でまとまらないミキサー食は、水分が多いと口の中でサラサラになり過ぎて誤嚥してしまうことがあります。
逆に、とろみが強すぎると口の中に張り付いて、これも誤嚥につながる危険性もありますので注意したいポイントです。
ミキサー食の作り方とポイント
それでは、ミキサー食を実際に作ってみましょう。
ただ、肉じゃがやカレーをそのままミキサーにかけないでくださいね。
3-1普通食またはやわらかめの食材をミキサーやブレンダ―にかける
まずは、普通食または柔らかめの食材をミキサーやブレンダーにかけます。
お粥やかぼちゃの煮つけ、粉ふき芋なら、それだけをミキサーでトロトロにすれば、見た目もきれいになります。
食べ物の残渣(ざんさ:残りかす)がなくなるまでくだく
まずは、食べ物の残渣がなくなるまでくたくたにします。
ここはスムージーと違います。
できれば1品
かぼちゃの煮つけ、粉ふきいも、白身魚などをミキサー食にする時は、別々に1品ずつ作ってあげます。
肉じゃが、炒り鶏などの食材を混ぜてしまうと、見た目も汚らしく食欲が減退します。
私たちは、緑にオレンジと彩がきれいだから食欲がわきますが、ミキサー食だからといって全部入れてしまうと、薄茶色の物体になってしまいます。
気を付けましょう。
3-2粘度をつけて飲み込みやすくする
粘度が少ない野菜や魚は、少し片栗粉などを入れて粘度をつけて飲み込みやすくします。
ミキサーにかけてから、水溶き片栗粉と混ぜて一煮立ちすると良いですね。
ポタージュスープくらいのとろみ
とろみは、ポタージュスープくらいが理想的です。若い人の食事をかぼちゃのポタージュやヴィシソワーズ(ジャガイモの冷製スープ)にしたときは、それをほんの少し温め直して上げても良いでしょう。
片栗粉や増粘剤で粘り気を出す
サラサラになってしまう食材の時は、片栗粉や増粘剤を利用しましょう。増粘剤といっても何を使ったらいいかわかりませんので、一番身近なものでは片栗粉が便利です。
夏場は、品質の高いバニラアイスがおすすめです。
ミキサー食を調理するときの注意点
ミキサー食を調理するといっても、何でもできるわけではありません。
そこで、ミキサー食を調理する時の注意点をご紹介しましょう。
4-1不向きな食材・料理がある
不向きな食材や料理があります。若い人の食事をそのまま使えないこともありますので注意しましょう。
4-2粒や繊維が口の中に残りやすいものは、誤嚥の原因に
粒や繊維が残ってしまうものは、誤嚥につながります。若い人にとっては何でもない食材にも、粒や繊維が残るものがあります。
4-3不向きな食材
ごぼうや蒟蒻は、危険です。
また、餅や団子も高齢者の食事には不向きであるといわれていますね。
このように、ミキサー食にしても、高齢者には不向きな食材があります。
弾力がある、繊維が多い、脂肪が少ない、水分が少ない
弾力がある食材として一番避けてほしいのが、蒟蒻です。蒟蒻はしっかり噛んで飲み込む力がある若い人ならどうということはありませんが、高齢者や乳児には危険な食材になります。
しいたけやシメジといったキノコ類も弾力があるので同じです。
また、ごぼうやタケノコなど繊維質のものは、どうしてもミキサーで粉砕しても繊維が残ってしまいます。
脂肪が少ない赤身の肉はミキサーにかけても滑らかさが出ませんので、肉は脂肪分が高いひき肉がおすすめです。
4-4ミキサーにかける前の食事を見せる
重度の認知症などではない限り、一度ミキサーにかける前に食事を見せるというのも1つの方法です。
これを、あなたのためにやわらかく食べやすくしますよ、ということですね。
ミキサー食は見た目も悪く、食欲減退しがち
ミキサー食は、どうしても見た目が悪く食欲が減退しがちです。そこで、見た目が悪くならないような工夫をしましょう。
できるだけ一品ずつミキサーにかける
おかずは一品ずつミキサーにかけます。
例えば、煮物ならにんじん、大根、ジャガイモと順番にミキサーにかけて、皿に分けて盛り付けると、彩もきれいになります。
4-5水分量が多すぎると誤嚥の原因に
水分量が多いサラサラのものも誤嚥の原因です。
味噌汁やコンソメスープはそのまま出さないという工夫をします。
とろみをつける
味噌汁やスープをミキサー食にする時は、あらかじめ片栗粉などでとろみをつけておきます。
とろみがつくことで、誤嚥を防ぐ効果が高まります。
4-6低栄養を防止する
水分が多い分、少量でも満腹になります。そこで、できるだけ高カロリー高たんぱく高脂肪のものがおすすめです。ダイエット中の女性の逆バージョンと考えると良いでしょう。
先にもありますが、夏場は体温を下げる意味でも、高品質のバニラアイスはピッタリです。
ただし、お腹を冷やし過ぎて下痢にならないよう、注意しましょう。バナナやアボガドも、高齢者向きの食材になります。甘みのある果物は喜んで食べてくれます。
ミキサー食レシピ
そこで、若い人にもおすすめ「アボカドと豆腐のポタージュ」をご紹介しましょう。
高たんぱくで栄養価も高く、しかも美味しいので普通の食卓でも召し上がれます。
材料・4人分
・アボカド 2個
・絹豆腐 350gから400g(大1丁)
・オリーブオイル 大さじ1
・牛乳 400ml
・コンソメ 小さじ2
・塩 小さじ1
・コショウ(若い人の分だけ)
作り方
①アボカドは皮をむき種を取り、一口大に切ります。
豆腐はボールに入れて、崩しておきましょう。水分を使うので水気を切らないでください。
②ミキサーに切ったアボカド、崩した豆腐を入れ、数分ミキサーにかけます。
③ペースト状になったら牛乳と調味料を入れます。
④夏場はこのまま冷製スープにすることもできます。
小鍋に入れて分離しないようによく混ぜ、温めても大丈夫です。
⑤最後にカップに注ぎ、好みでコショウをかけ、オリーブオイルをかけます。
ポタージュは高齢者と若い人が一緒に食べることができるため、楽しい食事になります。
ミキサー食とは?作り方について紹介!のまとめ
仕事として病院や施設で食事を作る人はもちろん、家庭で介護する人にとって介護食作りは大変です。
まして、自分の家族なら辛い姿は見たくありません。
少しでも楽しく美味しい食事を摂ることができるためにも、美味しいミキサー食を作ってあげましょう。